La la la
−8−



「なんで、裕ちゃんは急に冷たくなるのかな、って」

なっちも缶ビールを見つめたまま、だからお互いに正面を向いたまま切り出した。

「冷たいことしてへんで、別に」

「そうじゃなくって、なんかさぁ?すぐに、茶化したりして……からかってるっしょ。なっちのこと」

「……ん」

静かな声が、そこで途切れた。

首だけで裕ちゃんを振り向いたら、前髪をかきあげてる長い指が見えた。



「や。せやって。恥ずかしいじゃないですか」

いきなり口調を他人行儀にして、呟くように裕ちゃんが言った。

「恥ずかしいって何さ?」

「――だから。なっちにちゅーして、ぎゅっとしたまんまやったら。バレバレになるでしょ」

「……何、が」

「あたしが。こんなに、なっちのこと、めっちゃ好きですよ、って」



伏せた、眼差し。辛そうに笑う、口元。

それは仕事中にだけ時おり見え隠れする、自嘲的な裕ちゃんの表情。



あたしは、なんにも言えない。言葉にならない。

聞きたいことはいっぱいあって。言いたいことも、言ってほしいこともたくさんあって。喉が熱くて。

でも、どうしてもなにも言えないままで、裕ちゃんを見つめていた。

かろうじて動かせた手で、裕ちゃんの腕にふれる。それがさっきよりも冷たくて、悲しくなった。



「……そのうち嫌われるんやろな、って思ってた。なっちのこと振り回してばっかりやったから。それは」

「……」

「仕方ない、て。でも、どっかで言いたくてもう堪らなくて、でもめっちゃ怖くて。ずっと」

「……」

「……ずっと」

掠れる言葉の続きを待ってるだけの自分はずるいと思った。

だから、腕を伸ばして。髪にふれて。あたしはそのまま裕ちゃんを抱きしめる。

苦しい息も泣きたい気持ちも、きっと一緒だと思えたから。



裕ちゃん。



「なっちは、裕ちゃんのことが、好きです」

ね、裕ちゃん。

「ホントだよ?本当に。大好き」

だから。裕ちゃん。

「……大好き……」

だから。



さらさらと裕ちゃんの髪を撫でてる指が、自分ではどうにもならないぐらい震える。

抱きしめてる腕も、声も。全身から抜けてゆく力を止められない。

崩れ落ちそうになったそのとき、裕ちゃんの腕が瞬間的にあたしの身体に回された。

強く強く、何の気遣いもなしに。



――だから、離さないでね。



しっかりと支えてくれる腕に、安心して目を閉じる。

もう、何もごまかしたりしなくていいから。不安にならなくていいから。

ね、裕ちゃん。



もう、泣かないで……ね。






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