La la la
−9−



目が、覚めた。



外がまだ暗いこと。裕ちゃんの部屋にいること。裕ちゃんが隣に寝てること。……服、着てること。

順番に認識して、ちょっとだけ笑う。

焦らんでもえーよな、とか何とか、眠りに落ちる直前に裕ちゃんが呟いてた気がする。そういえば。



夢じゃ、ないね。

昨日の夜の記憶を辿って、幸せな気持ち。……やばいです、顔が笑っちゃって。

口元までタオルケットを引っ張り上げたら、こっち向きで寝ていた裕ちゃんが不意に目を開けた。

「起きたんや?なっち」

「え。あ。うん。……裕ちゃん、起きてたの?」

うぁ、ちょっと恥ずかしい、かも。慌てるあたしに追い討ちをかけるみたいに、裕ちゃんが笑う。

「何、ニヤニヤしてん。やーらしっ」

「なっ……別にやらしくないっしょ!?もうっ」

思わずグーにした手は、裕ちゃんに届く前にそっと捕まえられる。

視線がそらせない、甘いくせにオトナの微笑み。

「……裕ちゃんの方が……」

その先は、近づく唇に紡げないまま消えた。



瞳を閉じたまま、柔らかいキス。繰り返されて。

それがあんまり優しいから――ゆるゆると眠りに誘い込まれて、しまう。

ダメかなぁ?裕ちゃん、また笑ってるかな。困ってるかな。でも。

今、このまま眠れたらきっと、裕ちゃんの夢が見られる筈だから――。



『……なんや悔しいなぁ』

少しだけ赤い目をした裕ちゃんが、笑う。

『え、悔しい?なんで?』

抱きしめてた腕を離して、あたしは裕ちゃんを覗き込む。

――昨夜の出来事。夢のようで。もう夢に見てる。

『だってな、裕ちゃん今までめっちゃガマンしてきてんねんで?』

『えー?よく言うー、あれで?』

『ちゃうっ。そーと違って。あたしが、絶対言われへんって、絶対言ったらアカンってガマンしてた言葉を――』

『あ。あー。あははっ、そっか』

『そうっ!なんで自分、あんなあっさり簡単にゆーてしまえんねん』

裕ちゃんは、苦笑い、とは少し違う笑顔。何処か疲れてるけど、でも楽しそうな顔。

あたしは、少し不満で唇を尖らせた。

『なっちだってね、簡単なんかじゃなかったよ?』

『……あぁ。ハイ。それは。分かってます』

『もー。ホントだよ?それに……そういえば、なっちまだ聞いてないや……』

はた、とあたしはあることに思い当たって。んんん、とごまかすように視線をそらす裕ちゃんに、ぐっと顔を近づけた。

『ねー、裕ちゃん、まだなっちに言ってくれてなくない?』

『……ははっ』

『ちょっと、ズルイよ裕ちゃんー!笑ってないで、ねぇっ』

抗議するあたしの頬に、裕ちゃんの唇が素早くふれた。

そして。

『なっちが好きです』

そのまま、耳元を掠めた言葉。

一瞬だったけど、でも消えない。けど、でも、一瞬で。

『やーだー!早すぎっ!もっとこう、ゆっくり……』

言いながら、笑いながら、顔を赤くしてるあたしを。裕ちゃんはもう一度腕の中に閉じ込めて。

『もぉ、めっちゃ可愛くて仕方なくて――大事でトクベツで、誰にも渡せないです』

ゆっくりと、魔法の呪文みたいに囁いてから、あたしの額に唇を落とす。

言葉の全部が、心臓から身体中に行き渡る感覚。暖かい。

あたしは泣きそうになりながら、顔を上げて裕ちゃんを見つめる。

そうして、気持ちの何もかもを伝え合えるようなキスをした。



きっと、目が覚めてからも、明日からも、愛しい夢の続き。



ねぇ、裕ちゃん。

――ずっと、ずっとずっと一緒に、いようね。