La la la
−6−



「ビデオでも見る?圭織に借りてん、映画の、何やったかな」

「だーめっ。お話しするんだから」

裕ちゃんの手からリモコンを取り上げる。細い白い腕が、なんだか目に眩しい。

その腕をそっと掴んで、向き合って。

「……はい。何でしょう?」

「もー。だからぁ、なっちは裕ちゃんに聞きたいの。裕ちゃんが、なんでそーゆうっ……」

くんっ、と腕を引っ張られて、速攻でほっぺにちゅー。

そのまま、裕ちゃんにぎゅっと抱きつかれた。いつも楽屋でふざけてるまんまの調子。

「なっちに、こないなコトするかって?」

「……そうだよ。なんで?」

「なっちが可愛いから」

耳元に即答と余裕の笑い。いつもの答え。

「だからぁ、それだけじゃ分かんないべっ?」

「そういうのも、可愛いから」

落ち着いた声。それから、軽く耳に唇がふれた。

あたしがいつもより抵抗しないでいるのは、まぁ――他に誰もいないし。口紅つく心配もないし。だから。たぶん。

それでも腕の中でじたじたともがいて、身体を離したのは。嫌だったんじゃなくて、顔が見えないとなんか不安だから。

そうして、まっすぐ瞳を見れば、その静けさに吸い込まれそうで。言葉が出てこない。



「……やっぱ、よく分かんない。だって、なんかさぁ、だってそんなの……」

「んー。そーやなぁ」

裕ちゃんは、微かに笑って。延ばした腕でなっちの頭をいいこいいこってして。何故だか、ゴメンな、って謝った。

「上手く言われへんけど。なっちは特別なん」



「なっ……」

耳が、かーっと赤く、あっつくなった。

特別。なっちは特別。初めて言われた、そんなこと。

ってゆうかそんなこと言われちゃって、いいんですか、なっちは。ねぇ裕ちゃん。

「……そんな照れんでもえぇやん。あー可愛い、ホンマに」

「しょーがない……っしょ?照れるさぁ、そんなの」

裕ちゃんが、なっちのほっぺをつんっと指で突つく。茶化すように。

「どーなん?自分は。裕ちゃんに、特別やでー、って言われて。どう思うん?」



「うん……嬉しいよ、なっちは」

単純な口が、勝手に先に喋っちゃってた。

そんなこと言ったらどうなるのかなんて、考えてなかった。

頭の中で、思い出してたんだ。裕ちゃんのちゅーとか、セクハラとか。

恥ずかしくてドキドキして焦って、でも。

でも、何故だかなっちは笑ってた。いつもいつも。あのときもあのときも。

ずっと。



と、裕ちゃんがずるずると崩れ落ちるように。上半身、なっちにもたれかかるみたいに力なく抱きついてきて。

「……な。あー、裕ちゃんちょっと安心や」

はーっ、て。深く吐き出されたのは安心の溜息だったみたいだ。

なっちはやっぱりドキドキして赤くなっていたのだけど。

「ちゅーとかされても、嫌と違うねんな?」

「ん、うん。別に、やじゃないよ」

「えーねんな?」

「……っそういう意味!?でも、いきなりするのはナシだよ……って」

あぁ、もう。

今夜のなっちは、どうしようもない。

だっていきなりするのはナシってことは、いきなりじゃなければアリってことで――だから。

「するよ?イイ?」

ご丁寧に予告してくれる裕ちゃんの言葉に、目を閉じるしか、ないから。

ふれた唇に、全身の力が抜けるあたしがいるから――。






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