La la la
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……ふたりきりの、気まずい空気。

「なんや、なっちまだ着替えてへんの?」

あぁっ、返事するタイミング逃しちゃったし!

背中を向けたままでドキドキしていた。裕ちゃんから見たら完璧無視状態。

無言のまま、息が、詰まる。

限界っ!て思ったとき、裕ちゃんがバッグを背負った気配がした。

「……そろそろ着替えとかなアカンで、今日の撮影わりと早かったから」

あわてて振り向くと、もうドアに手をかけてて。

「えっ、ちょっ、なに、裕ちゃん帰っちゃうの?」

「帰られへんって。雑誌の取材。着物になんねんて」

ぼやいてる言葉の端っこで、なんとなく安心したような微笑み。

なっちだって普通に喋れて同じくらいほっとしてたけど。

それでその瞬間、やっぱりいつまでも裕ちゃんと気まずいのはやだっ!って思って。

「裕ちゃんっ!」

叫んで、駆け寄って、袖を掴んだ。



「うわ、なんやなんや、なっち。びっくりした」

「あのね、こないだねっ、ごめんなさい!」

言いたいことは頭の中で固まってなくて、何故だか謝った。

「……えーよ別に、裕ちゃん怒ってへんし。ってゆうか怒ってたん、なっちやな。なんで?」

「なんでかは、自分でもよく分からないんだけど」

だけど。だけどね、裕ちゃん。

「なっちね、裕ちゃんのことが時々わかんないの。なんか、ちゅーとかしてくるでしょ?

  それで、すぐになっちのことごまかしちゃうでしょ?そういうのが、なんか……」

裕ちゃんは静かな表情で、首をかしげてあたしを見てる。

本当は時間が気になってる筈なのに、そんなそぶりを見せなくて。それがあたしを慌てさせる。

言葉が上手く出てこない。言いたいことがいっぱいあったのに。ただ。

「……なんか、寂しいよ」

難しく考えるのを、やめた。

「裕ちゃんの考えてることが分かんなくって、なんてゆーか、寂しいの」

……素直になれば答えは簡単で。苛々してたのは裕ちゃんにじゃなくて自分に。

分かりたいの。だって――。

「そっか。……そう、です、か」

裕ちゃん、困った顔。だけども少し、笑った顔。

「なっちが知りたいんなら、話、しよぉか。今は無理やねんけど、今度」

頭に、そっと手が乗せられて。それにつられるみたいに頷く。うん。なっちも、そうしたい。

瞳で見上げる。

「でもな。裕ちゃんのこと分かっても、なっち、嫌いにならん?」

……え?

「裕ちゃんはー、なっちに嫌われそうで、けっこうコワイんですけど」

はは、と笑う裕ちゃんは、見たことないくらい頼りない顔で。

聞いたことないくらい、頼りない、声。

「でも、もぉしゃーないねんな……。話、しよな」

ぽんぽんっ、と撫でるようにあたしの頭を軽く叩いて、裕ちゃんは次の仕事に行ってしまった。

あたしは身体中の力を使い果たしたように、しばらく動けなかった。






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