La la la
−2−



「……裕ちゃんは、なんでそうなの?」

鏡に向かってメイクしながら聞いた。椅子に座ってるあたしの肩に、手を乗せてるそのヒトに。

つまり裕ちゃんはあたしの後ろに立って、悪戦苦闘してるのを楽しそうに覗き込んでるんだ。

「なんでって何が?」

あたしの髪の毛をいじりながら、はなうたみたいに返す。

「だから、なっちにキスとかしたりするのはなんで?」

ふっ、と小さく笑う声が、頭の後ろで聞こえる。今さら……って。

「なっちが可愛いからって言ってるやん、いつも」

背中にぴっとりくっつかれて。その拍子に、ラインを描いてた口紅がはみ出た。

「じゃましないでよもーっ」

手を止めて振り返って叫ぶ。あはははゴメンゴメンって裕ちゃんが笑う。

失敗した部分を丁寧に拭きとってくれて、改めて綺麗に塗り直してくれて。

「ほら、オッケーやで」

最後にぽん、と軽く頭を叩かれて。それで終わり。この話も終わり。いつもおんなじ。

――ずるい。

裕ちゃん、なんか、ずるい。

「どないしたん?怖いカオなってるで」

ずるいずるいずるい。抱きついたりキスしたり散々ひとのことドキドキさせて、

そのくせおねーさんぶって優しくして自分ひとりで分かっちゃってて。

「なんか、全然わかんないっ」

声が。自分でも知らず知らずのうちに、強くなってた。

でももう止まらなくて、裕ちゃんがちょっとびっくりした顔しても知らないって思った。

「裕ちゃんの考えてること、なっちは全然わかんないよっ!」

……こういうの。キレた、っていうのかな。頭の中じゃ、まずいって思ってるのに。

と。

「ゴメンな」

裕ちゃんは、小さく、誠実に謝ってくれて。

「でも、分からんと思う。でも、それで……その方がえーんちゃうかな、と思う」

もっともっと小さい声で、付け足すみたいに、言った。






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