Try to feel



最初は、一緒にいるだけで楽しかった。

好きかもしれないって気づいたとき、笑い返してくれて嬉しかった。

でも、それだけじゃもう物足りない。

気持ちだけで続くほどコドモじゃないし、オトナになんかなりきれない。

ただ、ふいに芽生えたこの感情を持て余してしまうなんて、あたしはイヤだよ。



「……そーゆーの、分かんない?」

何度目かのお泊まり会。いつもみたくベッドに腰掛けて、じっと後藤を見つめる。

きょとん、とした眼差しに、少しだけ睨みを利かせて。

「うーん……?」

唇を尖らせて、視線を泳がせて――えへへ、って困ったように笑う。

伝わんなかったかな。あたしは、もう一度言葉を探す。と。

「分かんないけどさぁ……」

後藤が、ゆっくりあたしの方に腕を伸ばしてくる。

そのまま、そっと寄り添う身体を、条件反射であたしは支えて。

「こーゆう、感じ?」

腕の中の定位置に収まった後藤は、上目遣いで尋ねた。

……分かってんじゃん。

こっちの言いたいことも、弱いとこもさ。



「やっぱ、そうだと……思うんだ。うん」

こうしているのは気持ちがよくて、そんな自分に嘘がつけない。

後ろめたさがないと言ったら、それもまた嘘なんだけど。

「!」

考え事をしている隙に。後藤の唇が、軽く頬に当てられた。

「……そーゆうんじゃ、ないよ」

熱くなる耳元を無視して、後藤の頬に指でふれる。

「いい?」

やだったら、途中でやめてもいいから、ね?

「――ん」

後藤は、瞳を柔らかく細めて。

「……たぶん、大丈夫だよ。市井ちゃん」

閉じた瞼と甘い言葉にそそのかされるように、唇をかさねた。



最初はただ、ふれてるだけのキス。

少しずつ、角度を変えたりして。何度も繰り返す。

慣れる、とまでは言わないけど。だんだんそれなりに余裕も、出てきたりするから。

たとえば右手で、後藤の髪をさらさら梳いてみたり。

背中に回した左手で、そっと抱き寄せたりなんて、出来る。

でも。だから。



もう少し先へ進んでみたいと。確かめたいと、思う。

温かさだけじゃなくて、もっと熱い筈の。



舌で、そっと唇を押し開く。

「……ぁ」

吐息と、声。自分のだか後藤のだか、もう分からない。

――ホントに、熱いんだ。

知らなかった。火傷しちゃいそうだ、こんなの。

ちゃんと息できてる筈なのに、なんでこんな苦しいんだろ。心臓、ばくばくしてる。

後藤の全部が伝わってくるみたいで、だんだん余裕がなくなって。

強く抱きしめようとしたけど、身体中から力が抜けてく気がして――。



ベッドに、倒れ込んでた。二人して。寝転がったまま、視線が合う。

「……大丈夫?」

「……うん」

後藤は頬が赤くて目が潤んでて、熱っぽい子供みたいだ。

たぶんあたしも、同じような顔してるんだけど。

「どうだった?市井ちゃん」

こっちに手を伸ばして、覗き込む瞳。その手を握りながら、答える。

「んー、……ドキドキした」

正直に打ち明けると、後藤が、あたしも!と続けた。

「でも全然嫌じゃなかったし、なんか、……うん、シアワセ」

そうやって、にっこりと。笑ってくれるんなら、それでよかったと思える。

「だったら、市井もシアワセ」

笑い返して、今となっては何が足りなかったのか思い出せないくらい優しい気持ちで。

繋いだ手を引き寄せて、後藤を抱きしめる。



と。

「ねーねー市井ちゃん、もう一回したらダメ?」

耳元で無邪気な声が聞こえて――嘘でしょ!?って。

だってあたしはまだ、心臓がやっと落ち着いたかなってぐらいなのに。

「……平気なの?」

「や、平気か分かんないけど、なんかもう一回したいなーなんて思って」

へらっと笑う後藤に、今さら格好つける気も起こらない。

ちょっとだけ、負けてる?なんて思いながら。

「んじゃ、いくよ?」

あたしは身体を起こして、息を整えて。

おとなしく目を閉じてる後藤に、もう一度くちづけた。