Tear away



いつもあなたがそこにいてくれて、

だからあたしはここにいられたのだと思う。

すぐ隣だったり一歩先だったり、ずっとずっとそばに。

手を繋いで腕に縋らせて、全身であたしを導いていて。



「市井ちゃん……」



闇の中に、その姿が浮かんだ。

振り返った笑顔は儚げで、何処かに行ってしまうんだと分かった。


夢の中でさえ。

でも、夢だから。

市井ちゃんは手を差し伸べてくれる。

「後藤も、来る?」

あたしは、子供みたいにこくこくと頷いて、その手を。

――掴もうとして。掴めなかった。



「待って……市井ちゃん」

あたしも、一緒に行くよ。だから。

なのに、動けない。喉がからからで、声も出ない。

市井ちゃん。市井ちゃん。……どこ、行くの?

泣きそうなあたしを困った顔で見つめて、闇の中に消えようとする、姿。

待って。

待って。

待って。



「一緒に、いようよ!」

それが何処だって、かまわないから。

だって行くんでしょ?みんなで、一緒に。

圭ちゃんとかやぐっちゃんとか、なっちも、裕ちゃんも。

だから、行かないで。ひとりで、どっかに消えちゃわないで。

祈るように思っても、あたしの気持ちは届かない。



零れた涙で、目が覚める。

昨夜、泣きながら眠ってしまったことに気がついた。

……夢の中でも、泣いてた。

こんなに何処までも追いかけてくる気持ちも、振り切れない想いも。

初めてで、そしてもうこれ以上いらないと思った。



真っ赤になってる目を、濡れたタオルで冷やす。

じんじんして、痛い。

「……痛い痛い痛い痛い」

声に出してみる。

「おなか、すいた」

思ったこと、全部。

そうすれば他のことを考えなくて済むんだと、気づいた。

「そろそろ、着替えないとなー。今日、何着てこーかな。天気いいのかなぁ。……なんか、眠くなってきちゃったな……」



――会いたい。



「また、会えるって……戻ってくるって、言ってたけど。

 今日じゃないし、明日じゃないし、ずーっと先だから、そんなの会えないのと同じなんだよね……」



――なんで。



「……どうしよう、涙が止まんないよ……」