Sour grapes
| 圭織のいいところは嘘をつかないとこだね、と。 いつだったかずっと前に気づいてくれたの、彩っぺは覚えてるかな。 圭織は、ずっと、覚えてる。 覚えてるから、だから、苦しい。 長い長い夢を見てる。 「……平気だよ」 あぁ、そんなことを言ったんだった。 だって。 今なら、あたしがいなくなっても大丈夫だと思うから、と。 彩っぺは自分でそう言ったくせに。 「彩っぺがいなくなっても、娘。は平気だよ」 強く強く見つめた。その姿を、忘れないように。 彩っぺは、軽く頷いて。くしゃりと笑う。 あの、笑顔。 あの、笑い方。 おつかれさま、また明日ね、ってそんな挨拶があと何日交わせるんだろう。 確かそんなふうに思い始めた頃に。 じゃあ、圭織の気持ちは何処に行くんだろう、って考えて。 「彩っぺなんかいなくても、全然平気だよ」 睨むみたいに、言った。 振り向いた彩っぺは、ふぅん?って感じに。 眉と唇の端をくっと上げて、挑むみたいな、それでいて柔らかい瞳して、圭織の顔を見た。 「娘。も、タンポポも……圭織も。彩っぺなんかいなくても、きっと全然平気だよ」 だって。だって。 彩っぺが、それを望んだくせに。 「……そんな寂しいこと言わないでよ」 ふいに眉を下げて、情けないような優しい顔をして。 圭織の頭を、ぽん、と叩いた。 そのまま、部屋を出ていく彩っぺを見てた。そのまま、黙って見送った。 閉まるドアの音に涙だけ溢れて。 だって。だって。だって。 本当のことを言ったらそばにいてくれた? 行かないでって言ったら行かないでいてくれた? そんなの違う。絶対に違う。それくらい分かってたから、だから。 ……嘘を、ついたの。 長い長い夢が覚める。 彩っぺ。今、どうしてる? 幸せでいる?笑ってる? 圭織は、今も。 |