Rainy blue



――雨の日は、何処か寂しくて。人恋しいような、そんな気持ちになる。



「紗耶香、そんなこと思ってたんだ」

圭ちゃんのまっすぐな瞳に覗き込まれて、あたしは『やはは』と笑う。

「やー、柄にもないこと言っちゃったねぇ」

照れ隠しに、肩にもたれかかる。

「……そういう意味じゃなくてさ」

さっきより少し近くに聞こえる声が心地いい。



圭ちゃんちの二人掛けソファの右側は、あたしの定位置。この上なく落ち着く。

それはきっと、左側の温かさが特別なせいだけど。


「言ってることがリアルなんだもん。やっぱ……気になったよ」

知ってる。あれから、雨の日は圭ちゃんが優しい。

心配されてるのが伝わる。……愛されてるなぁ、なんて感じる。

目を閉じれば、それに合わせて抱きしめてくれる腕が、あたしには本当に必要で。



「紗耶香?」

「……うん」

何も答えないのに、なんで分かられてしまうんだろう。

圭ちゃんの腕の中。こんなに楽でいいのかな。

窓の外は細かい雨が止みそうになくて。

二人きりで過ごす部屋の中は、すごく静か。



「……まだ、寂しい?」

耳元で確かめるように聞かれて、すぐに、もう平気だよって返せたらよかったのに。

そんなことぐらい分かるけど、それが出来なかった。

どうして。だって。

胸の奥の空っぽな感じは消えない。こんなに暖かくされてても。

感触じゃない。感覚のモンダイなんだ。

――どこまでも、わがままなあたし。



「困った子だなぁ」

呆れたように、それでもまだ笑ってくれる、あなたが。

だからきっと、この感覚の答えも持っている筈。

耳と、頬。くちづけを落とされて、顔を上げる。

優しいキスは、ひとつ息をつくだけの短さで離れてく。



目を開けて、交わる視線が、また尋ねてくるけど。



「まだ……」

さすがに何か言おうとした唇を、もう一度かさねる。

腕を背中に回して、子供のように縋った。

言葉じゃなくて。少しずつ分かる、感覚の何処かで。

だから、いつもよりちょっとだけ長く、こうしていて。



「……びっくりした」

腕を放した後の、圭ちゃんの呟き。思わず顔が赤くなる。

「なんでっ。いーじゃん」

視線をそらして拗ねてみせると、くしゃくしゃと髪を撫でられて。

「いいよ。紗耶香が、寂しくなくなったんなら」

柔らかく微笑んで、全て許すような瞳。

――何度でも、いつまででも、そうしていてあげるよ。

あたしを甘やかすそんな言葉に包まれる。



満たされるってこと何となく分かった気がした、雨の休日。