懐かしい夢を見た。それが夢だと気づくのに少し時間がかかる。
悲しくはなかった。不思議な気持ちだ。今日はプッチモニの仕事で、だけど紗耶香はそこにいない。
頭の中ではもう、プッチモニ=後藤と吉澤と一緒の仕事、というはっきりとした認識がある。
気持ちも。
ようやく何とか整理がついた。と、思っていた。
夢は、ただの夢で。思い出。戻りたい訳じゃない。
紗耶香が、そして、あたしも後藤も。前へ進むことを決めたんだ。その先の何も知らなくても。
着替えようとして、服を選ぶのに一瞬悩んで少し笑う。
今日も、後藤と吉澤はお揃いみたいな格好かもしれない。だからって合わせることもしないけど。
見た目のギャップならそれはそれ、会話のきっかけにもなるし。
紗耶香がいなくなって、後藤と二人で向かい合ったときにどうしていいか分からなくなったことがあった。
それは、あたしが紗耶香を通してしか後藤を見ていなかったせいで。
後藤も、あたしより何でもまず紗耶香、って感じだったし。だから。
正直、まずいな、と思った。別に仲が悪い訳じゃないのに、ぎこちなくて仕方なくて。
紗耶香とのプッチモニを守りたかったけれど、それは無理だと自分でいちばん分かった、あのとき。
あたしは後藤に対して――なんて言うんだろう、同じ目線に立ってあげることは出来ないんだ。絶対に。
『なんとかレンジャー』とかいって一緒に遊んであげられない。それは年齢のせいとかじゃなく。
今。
後藤と吉澤は仲がいい。訳の分からない、くだらない話をしては二人で盛り上がっている。
よかったな、と思う。後藤のために。だから、プッチモニのために。
そして、それを時々呆れながら見ているあたしがいて。
たとえばさっき見た夢みたいな、少し前に繰り返されていた場面によく似た時間が戻って来たようで。
――これが、プッチモニだ、って。そのときすんなりと感覚に馴染んで、嬉しかった。
吉澤は、まだあたしを『保田さん』と呼んでいる。
矢口のことも『矢口さん』って呼んでるみたいだし、新人4人は今のところみんなそうなのだけど。
呼び方はどうあれ、とりあえず仲良くなりたいと思う。まだ二人だと、話らしい話ってしてないし。
お互いにどうしても後藤の方が話しやすいから。でも、それじゃだめなんだとあたしはもう知ってるから。
――人見知りする、なんて言ってられない。
それで、早く『圭ちゃん』って呼んでもらえるようになりたいな、とか。
そんな訳で、今の吉澤になら勢いあまってスネぐらい蹴られてもあたしは怒らないと思う――けど。
最近、実は後藤以上に手加減を知らない子なんじゃないかって気がして、ちょっとどうしたものか。
表に出て、鍵を閉める。まだ七月になったばかりなのに、真夏並みの暑さ。
身体を包むその暑さで、いろんな記憶が蘇る。去年の夏。一昨年の夏。紗耶香がいた夏。
『真夏の光線』を口ずさみそうになって、笑った。
――この、夏は。寂しくない。紗耶香はいないけれど。紗耶香がいなくても。
仕事が終わって帰ってきたら久々にFAXを送ってみよう、と思った。
楽しいことばかりじゃないけれど、今から向かうその場所はきっと楽園。
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