Let you go.



愛情。情熱。親近感。独占欲。ぐるぐるする、真夜中。

裸の肩が、少し寒い。

ナナさんは、もうすっかり眠っているものだと思って。金茶色の細い髪に、頬を摺り寄せたり、してみた。

と。

「……ん……」

ゆらり、と頭が揺れる。覚醒したらしいナナさんの唇が、無造作にあたしの首筋にふれた。

それだけで固まる自分。無茶苦茶この人に弱くて。けれど、情けないとさえもう思わない。

綺麗な額にキスをして、肩から背中に腕を回す。華奢な身体。夜がまだ明けそうにないことに感謝したい。

抱き寄せた瞬間、近づく吐息を首に受けて――そのまま、小さな頭を掻き抱いた。



それでも、そんな空気の一切を無視して、あたしの喉元に押し当てられた唇は呟く。

――『ナミエ』。

声じゃ、なかった。ただ、その名前を呼ぶ形に動いた唇の感触。

それを音として聞いてしまう、自分の耳。いじらしいんだけど、やっぱり少し、恨めしい。

思考が巡る前に、耳元で囁いた。

「……ナナ、さん」

零れるのは、気持ち。分かってる。分かられてる。いつもより余計に甘えようとした、そんな声色。

「似てないよ、りっちゃん」

くすくす、と。柔らかく笑う声が、あたしの胸に満ちる。……温かい。難しく考えそうになるいろいろなことを、ふわり、と解き放たれる感覚。

「似てないよね」

自嘲気味じゃなく、そう呟いた。本当に似てなくて、それが可笑しかった。



短い髪を、指で梳く。ゆっくりと。――こんなに、愛しい。

誰にも、とか、誰より、とか。気持ちの優劣じゃなくて。ただ、この人の中に確実にある、自分の存在。そのことが、単純に嬉しかった。

「ナナさん」

口をついて出たのは、普段通りの自分の声。それにきちんと気づいて、ナナさんは顔を上げてくれた。

何?って見上げてくる眼差しに、頑張って――それだけで蕩けそうになるんだ、いつも――視線を合わせる。



「好き」



飽きるほど思わされて、数えきれないくらい口にした言葉。それでも今夜、この瞬間にどうしても言いたくて。

この想いのためだけに、あたしにとって、あなたがいる。熱っぽいこと、本気で信じた。

「ありがと」

嬉しそうに笑う、その表情も。柔らかく細められる目元も、綺麗な形を描く口元も。

何度だって、繰り返したい。そばにいて、見ていたい。ずっと。……ずっと。



隣で眠れる夜だって、明けてしまってもかまわない。

朝が来ればまた、一緒に騒ぎ立てる一日が始まる。