Into the night
| 真夜中に目が覚めたのは眠りが浅かったせいで。 深く寝つけなかったのはあなたが隣にいるせいだ。 眠っているときでさえ微かに眉を顰めて、まるで不機嫌な猫。 不用意に手を出せば引っ掻かれそうで、息を潜めて寝顔を見つめる。 時々、こんなふうにあなたを目で追う癖がついた。 始めは無意識に。 それが意識的になってからは、気づかれないように。 気づかれていると知ってからは、あなたの機嫌を損ねない程度に。 健気だなぁと思う。我ながら。 視界を遮る前髪をかきあげて、詰めていた息をそっと吐く。 夜と、ベッドと。裕ちゃん。この組み合わせは、卑怯なほどあたしを惹きつけて止まない。 「……裕ちゃん」 名前を呼ぶと、微かに目を開いて再び眠りの中へ。 ただその一瞬だけ、あなたの全てを手に入れたような錯覚に陥る。 愛しくて仕方ないけれど、それを伝えようとすると声が出せなくなる。 まさか自分のこと、御伽話のお姫様だなんて思ったりしないけど。 あたしのこの想いは、何を代償にして何を得るのだろう? 『好き』が言えないまま。 指を延ばして、額にかかった前髪にふれる。 心は何処まで、夜の空気と同じに静かでいられるだろう。 金色の髪は細くて無機質で、子供の頃に持っていた人形を思い出した。 閉じたままの瞳は明らかに心地よさげで、薄く開いた唇に誘われる。 『欲しい』って言う方が何倍も簡単。 気持ちがいいから。それだけを理由にしたり。 大切なメンバーだからと取り繕ったり。 そんな大人と、大人のふりで。 言わなければならない筈の言葉を曖昧に遊ばせてばかり。 くちづけで、何もかも伝えられる? 抱き返す、その腕を信じていい? 白い白いシーツの海。冷たい冷たい、その狭間。 どうか、闇の中に消えないでこのまま。 夜に落ちたら、朝なんていらない。 霞む視界の中であたしを求めるあなたが全てならいい。 |