Heartbreak
| 自分でも、意地になってるの分かってて。 さっきの収録とか、振り返って少しだけ反省しなくちゃとは思う。 裕ちゃんの苦笑いは、圭織にだって痛く映る。 『気配もなかったし』 『前触れはありましたけど』 彩っぺの脱退について尋ねられて、食い違う裕ちゃんと圭織の意見。 でも言わずにはいられない。譲れないことって、あるよ。 彩っぺは、服を作りたいって言ってた。 裕ちゃんは知らなかったかもしれないけど、圭織は知ってる。 ――それを聞いたのが、タンポポしかいないときだったってだけだけど。 裕ちゃんが困ったように笑ってる、その裏で傷ついてることぐらい圭織は分かってる。 でも。知らない。 圭織の中の子供な圭織が、意地悪な気持ちになる。 ……傷つけばいいんだ、って。 いつだって、彩っぺの『いちばん』は裕ちゃんだった。 裕ちゃんがそれをどう受け止めていたのかは分からないけど。 少なくとも彩っぺが一途に想ってた全部を、裕ちゃんは返していなかったと思う。 いつもいつも自分ばっかりが重たい、愛情。 彩っぺがどれだけせつなかったか、圭織には分かる。 だって、圭織は彩っぺのことが好きだったから。 うん。好きだった。好きだったんだよ。 彩っぺの気持ちなんかとっくに気づいてたけど。 ひっくり返ったって好きになってもらえやしないって、分かってたけど。 ……なんでだろう。いつから、だったんだろう。 あのね、きっとね。最初、まだ娘。が5人だった頃に。 圭織が思ってたことがあって。 『裕ちゃんは、なっちの。彩っぺは、圭織の』って。 一緒にユニットが組めて。タンポポになって。 いろんなことで注意されたり怒られたりしたけど、彩っぺは優しかった。 彩っぺはいつだって、圭織の欲しい言葉をくれる人。 悩み事とか相談されると嬉しいって分かってて、打ち明けてくれたり。 愚痴っぽく話したあとで、『圭織に言ったら楽になったよ』なんて言ってくれて。 だから、圭織は彩っぺのことが好きだった。 大好きで、――愛してた。 裕ちゃんなんか傷つけばいい。 彩っぺに愛されてた裕ちゃんなんか。 きっと、彩っぺが自分から離れていくことはないって思い込んで。 彩っぺのことなら自分がいちばんに気づく筈だとか、信じて疑わなくて。 ――ぽろぽろと、零れる涙。 彩っぺは服を作りたがってたんだよ、って。 圭織がそう言ってるとき、裕ちゃんはどんな気持ちになるんだろう。 もしも圭織が裕ちゃんだったら、耳をふさぎたくなってると思う。 思ってて、分かってて。圭織は、それを、してるんだ。 ――流れるままに。熱くて。痛い。 卑怯者だって。自分のことを。そう、思う。 もしも彩っぺが知ったら、きっと怒られる。悲しませてしまう。 でも。 自分ばっかり悲しいみたいな顔をしないで。 圭織だって、とっても悲しいの。 どうしていいのか分からないくらい。 圭織も、好きだったの。 こんなふうに、涙が止まらないくらいに。 彩っぺのこと、誰よりも。 |