Sweet holic
−from Kei−



「本当に、辞めちゃうんだね」

控え室の騒がしさに紛れるように、そう口にしてみる。

言ったそばから、言葉だけが宙に浮いてるみたいだった。



「本当やよ」

綺麗な苦笑いで、裕ちゃんが側を通り過ぎて行く。

……聞いてなくてもいいのに。よく気の付くリーダーを、ほんの少し恨めしく思う。

俯きかけた自分を叱って、辻から貰った飴玉をひとつ口に入れた。



裕ちゃんが、いなくなる。

まだ、ピンと来ないな。鈍いのかもしれない、あたし。

理解しようとしてる頭と、追いつこうとしてる心と。中途半端だ。

飴は強いレモン味で、微かに喉に染みる。



――あの日。直接、本人の口から伝えてくれたのが裕ちゃんらしいな、と。そう思った途端に、涙が止まらなくなってた。



不意に、思い出す。

明日香が辞めるとき。彩っぺが辞めるとき、紗耶香が辞めるとき。裕ちゃんが、しつこいぐらいに繰り返してた言葉。

『なぁ、気が変わったんなら言いや?今やったら、話つけたるで?』

冗談めかして、優しい目をして。相手が首を振るのも知ってて。

……あたしが言ったら、怒るかな。また、苦く笑うかな。

口の中の小さな飴玉を、堪えきれずに噛んで砕いた。



したいようにしてほしいと、思っていた。みんな。誰よりも、裕ちゃんに。

だから。大丈夫。

飴玉はもう欠片もなくて、舌に痺れたような甘さだけが残ってる。

4月15日のそのときまで、上手く実感できないままでいい。