One night story
−In a bad mood−



あぁ。また。なんで裕ちゃんって、こう、気分やさんなんだろ。

さっきまで別に普通だったのに、今はすごく、なんか、違う。

ほら、「無かったことにしようか?全部」なんて、あんなことの後に言うんだ。

ちょっと嫌な顔。すごく、嫌な顔。苦笑い。薄くて冷たい。

「『どうせ出来ないくせに』とか思ってるんやろ?」だって、ひどいね。なっち何も言ってないのに。

一人で勝手に追い込まれて、一人でどんどん追い詰められて。

いつのまにかすっかり傷ついた表情で、なっちを縋る瞳で見てる。



すぅ、と小さく息を吸った。

穏やかな笑みを、そっと浮かべる。

この3年と少しの間で何か上手く出来るようになったことがあるなら、それらは全部裕ちゃんのため。



「ねぇ、裕ちゃん?明日の夜、なに食べたいかな」



裕ちゃんは、何かを言いかけて口を噤んだ。

しばらく考えてから、「かやくごはん」と呟く。

それって、炊き込みごはんのことだよね?そういえば、作ったことないや。

ちゃんと出来るかなぁ。作り方、本に載ってたっけ。

明日の仕事、あんまり遅くならないといいんだけど。

えーと、出る前に冷蔵庫確認して、帰りに買物して。

裕ちゃんが帰るまでには、間に合わないかもしれないな……。



ひとしきり考えを巡らせて、そばにある腕を引き寄せた。

気がつけば、刺々しい雰囲気は跡形もない。

いつもと同じ気怠さだけが、あたしたちを包んでいる。