The happiest



8月10日が過ぎて、なっちは21歳になりました。



みんなが祝ってくれるのは、嬉しい反面、ちょっとだけ複雑。

もともと、17歳って年齢がいちばん好きだったし。鏡の中の自分は何度見ても究極の童顔で、メンバーにからかわれてばっかり。

じゅーく。ハタチ。……にじゅう、いち。響きの重さに、自分の成長がきちんと伴っているのかどうか、微妙な感じ。

みんな、こんな気持ちになったのかな。2日前のカオリ、去年の圭ちゃん。再来年の1月には、矢口もこんな気持ちになるのかな。

……そして。



「裕ちゃんの21歳って、どんなだった?」

すぐそばにある顔に視線を移して、何気なく尋ねた。本格的な眠りに就く前の、腕枕の時間。

「あ?突然やなぁ……。21歳、というと。えー」

「昔すぎて覚えてないかぁ」

「ちょお。何言うの」

「うそうそ、冗談」

驚いて軽く上がる眉とか、記憶を辿って遠くを見つめる瞳とか、ふざけて拗ねる唇とか。全部見つめながら、あたしは柔らかく笑う。

裕ちゃんも穏やかな表情をして、こんなふうに話をするときのクセで、ほんの少し顔を近づけた。

「21歳の頃はー。……内緒」

「あら。どういうことだい?裕ちゃん」

言いながらも、詰問するつもりは全然なかった。裕ちゃんの方でもそれを分かってて、安心な沈黙に落ちる。

だってね、いろんなことがあったんだと思うんだ。簡単には語れないぐらい大切なことも、きっと。

別に恥ずかしいことじゃなくても、純粋に隠しておきたいこともあるかもしれないし。そういう気持ちは、なっちにもなんとなく分かるから。

裕ちゃんの過去はいつも、なっちにとって特別な、手が出せないのに目を逸らせない、そういう対象。

小さい頃に偶然見つけた、お母さんが大事にしてた指輪みたいに。懐かしい記憶の、宝石の赤い色を思い出して眩しい気持ちになれた。

「……なん、どうかした?」

「ううん?なんで?」

「いや、なんか……ええけど。別に」

「うん。電気、消す?」

「あー。……消す」



訪れた薄闇の中で、眠る体勢を整えた裕ちゃんの肩に、そっと額をつけた。

明日の朝は出掛ける時間が別々だから、あんまり話が出来ないかもしれないね。

で、この次となると、今度はいつになるんだろうね?全国を飛び回ってるあたしたちの、時間と距離がかさなる貴重な休息。

頭の中でスケジュールを辿ろうとしたけど、ほどなく意識が霞む。ぽやぽやとした眠りに、そっと身を任せた。

「なっち」

「んー」

「あんなぁ」

「……ん」

「好き」

「……」

微かに聞いた裕ちゃんの声も、優しい夢の入口。



21歳の裕ちゃん。3年後に、なっちに出逢う裕ちゃん。

仕事に遊びに飛び回って、毎日忙しくしてたよね。きっと笑ったり怒ったり、誰かに恋して胸を痛めたり。歌手になる夢も、見ていたね。

そういうことの全部で今の裕ちゃんを形作って、こうして隣にいてくれる。

21歳のなっち。5年前に、裕ちゃんに出逢ったなっち。

あの日から今日までは、定められた道じゃない。悩んで、選んで、歩いて、迷って。



いつでも願うのは、いちばんの幸せに、出来るだけ近くいられますように。